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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)26号 判決

京都府宇治市広野町寺山九九の八四

控訴人

和田紀代志

右訴訟代理人弁護士

高田良爾

京都府宇治市大久保北の山

被控訴人

宇治税務署長

宮崎勉三

右指定代理人

長野益三

国友純司

勝間甚之烝

西浜温夫

前田全朗

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「1 原判決を取消す。2 被控訴人が控訴人に対し昭和五一年三月一一日付でなした(一) 昭和四七年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分、(二) 昭和四八年分所得税の更正処分のうち総所得金額一一〇万円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに(三) 昭和四九年分所得税の更正処分のうち総所得金額一三五万円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取消す。3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係は、次に訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

1  原判決四枚目表九行目から同五枚目裏六行目までを次のとおり改める。

「(一) 昭和四七年分

(1) 収入金額 一六三三万二七四五円

(2) 所得金額 一六九万八六〇五円

収入金額に同業者の平均所得率一〇・四〇パーセントを乗じて算出(円未満切捨て)

(二) 昭和四八年分

(1) 収入金額 四〇八五万一四一〇円

(2) 所得金額 四〇二万三八六三円

収入金額に同業者の平均所得率九・八五パーセントを乗じて算出(円未満切捨て)

(三) 昭和四九年分

(1) 収入金額 六五七二万九五九一円

(2) 所得金額 六二〇万四八七三円

収入金額に同業者の平均所得率九・四四パーセントを乗じて算出(円未満切捨て)

3  収入金額について

控訴人の本件各係争年分の収入金額の内訳は次のとおりである。

(一) 昭和四七年分

(1) 東村静雄 一二七七万五〇〇〇円

(2) 三洋電気工業株式会社 三四〇万七七四五円

(3) ユニオン電機産業株式会社 一五万〇〇〇〇円

合計 二六三三万二七四五円

(二) 昭和四八年分

(1) 東村静雄 三四〇五万七〇〇〇円

(2) 三洋電気工業株式会社 一〇四五万二〇〇〇円

(3) 遠藤明夫 六三四万二四一〇円

合計 四〇八五万一四一〇円

なお、遠藤電気商会こと遠藤明夫(以下「遠藤」という。)は、ヤマト電気エンジニアリング株式会社(以下「ヤマト電気」という。)から請負った工事全部を控訴人へ外注していたが、昭和四八年分については遠藤に帳簿の備付けがないため、これを次のとおり算出した。

A 昭和四九年中に遠藤が控訴人に支払った外注費 九八八万六五九一円

B 昭和四九年中に遠藤がヤマト電気から受領した請負代金 一〇二七万六一四三円

C 昭和四八年中に遠藤がヤマト電気から受領した請負代金(材料代等相殺後の金額) 六五九万二二五七円

〈省略〉(小数点5位以下切上げ)

(C)6,592,257円×0.9621=6,342,410円

(昭和48年中に遠藤が控訴人に支払った外注費)

(三) 昭和四九年分

(1)  東村静雄 一八五三万五〇〇〇円

(2)  有限会社東村電設 三〇四四万七〇〇〇円

(3)  三洋電気工業株式会社 六八六万一〇〇〇円

(4)  遠藤 九八八万六五九一円

合計 六五七二万九五九一円」

2 同七枚目裏初行の「各係争年分」から二行目までを「(一)(1)、(2)、(二)(1)、(2)、(三)(1)ないし(3)の各収入先及び収入金額は認めるが、その余は否認する。昭和四七年分の収入金額は(一)(1)、(2)の合計一六一八万二七四五円、昭和四八年分の収入金額は(二)(1)、(2)の合計三四五〇万九〇〇〇円、昭和四九年分の収入金額は(三)(1)ないし(3)の合計五五八四万三〇〇〇円である。」と改め、九行目の「あり」から一一行目の「一三五万円で」までを削除する。

(被控訴人の主張)

控訴人の必要経費の実額主張は否認する。控訴人の右実額主張とその提出した証拠を対比すると、証拠の内容は不自然な点が多数存在したり、全額を減価償却費に算入することができないものであったり、計上年分が誤っていたり、家事関連費と思われるものが含まれていたり、雇人費用が計上されていないなどして、到底必要経費の実額を確定することはできない。

なお、控訴人主張の必要経費が正当なものとすれば、予備的に次のとおり主張する。

1  控訴人が証拠として提出している領収書等の書証の内容を仮りに控訴人の主張どおりのものとし、これにより必要な経費を算出した(控訴人が必要経費として証拠説明により明らかにした額に従った。)としても、控訴人の本件各係争年分の所得金額は、次のとおりいずれも本件各処分の所得金額を上回るものである。

(一) 昭和四八年分

(1) 収入金額 四〇八五万一四一〇円

(2) 必要経費 三二八四万二八六八円

(3) 所得金額 八〇〇万八五四二円

(二) 昭和四九年分

(1) 収入金額 六五七二万九五九一円

(2) 必要経費 五四三六万七七一一円

(3) 所得金額 一一三六万一八八〇円

(三) 昭和四七年分

(1) 収入金額 一六三三万二七四五円

(2) 所得金額 三〇一万一七五八円

(昭和四八年分の所得率(収入金額に対する所得金額の割合)一九・六〇パーセント及び昭和四九年分の所得率一七・二八パーセントの平均値である一八・四四パーセントを右収入金額に乗じて算出した額)

2  また、控訴人が当審において主張する収入金額は、被控訴人が原審において主張していた金額で、被控訴人が当初控訴人の収入として把握し得た額に過ぎない。従って前記1の昭和四八年分及び昭和四九年分の必要経費の額が真実とすれば、この金額を基礎として所得金額を推計すべきである。そこで右年分の必要経費を前提として右各年分の所得金額を推計すると、いずれも次のとおり昭和四八年分及び昭和四九年分の更正処分の所得額を上回ることになる。

(一) 昭和四八年分

(1) 必要経費 三二八四万二八六八円

(2) 収入金額 三六四三万一三五六円

(必要経費を同業者の平均必要経費率九〇・一五パーセントで除した額)

(3) 所得金額 三五八万八四八八円

(二) 昭和四九年分

(1)  必要経費 五四三六万七七一一円

(2)  収入金額 六〇〇三万五〇一六円

(必要経費を同業者の平均必要経費率九〇・五六パーセントで除した額)

(3) 所得金額 五六六万七三〇五円

(控訴人の主張)

1  控訴人の本件各係争年分の収入金額は次のとおりである。

(一) 昭和四七年分 一六一八万二七四五円

(二) 昭和四八年分 三四五〇万九〇〇〇円

(三) 昭和四九年分 五五八四万三〇〇〇円

2  控訴人の本件各係争年分の必要経費は次のとおりである。

(一) 昭和四八年分 三三二八万六一六八円

(1) 外注費 三一一二万一五三〇円

ア 横地電気 一七三一万五六三〇円

イ 斎藤電気 七八九万八一〇〇円

ウ 平塚電気 四九〇万七八〇〇円

エ 川島電気 一〇〇万〇〇〇〇円

(2) 一般経費 二一六万四六三八円

ア ガソリン代(大協石油) 六八万六六五二円

イ 通信費(電話代) 六万一一七一円

ウ 車輛維持費 一二八万九四三〇円

(岡崎自工 一一四万八四三〇円)

(保険料 三万八一〇〇円)

(税金 八万二七五〇円)

(その他修理費 二万〇一五〇円)

エ 接待費 一二万七三八五円

(二) 昭和四九年分 五四四五万一一五八円

(1) 外注費 五〇一五万四八四〇円

ア 横地電気 二四一二万三二四〇円

イ 斎藤電気 七八六万四一〇〇円

ウ 平塚電気 四九四万四〇〇〇円

エ 河重電気 一三二二万三五〇〇円

(2) 一般経費 四二九万六三一八円

ア ガソリン代(大協石油) 一〇八万二一四四円

イ 通信費(電話代) 五万一〇一九円

ウ 車輛維持費 一八一万四五〇〇円

(岡崎自工 九六万六六〇〇円)

(弘伸オート 四六万五〇〇〇円)

(保険料 二八万九〇〇〇円)

(税金 一五万一〇〇〇円)

(その他修理費 四万一〇〇〇円)

エ 消耗品費 六万二〇九〇円

(工具費 三万六一五〇円)

(雑材 二万五九四〇円)

オ 宿泊費 五〇〇〇円

カ 事務費 五〇〇〇円

キ 接待費 三八万二一六五円

(三) 昭和四七年分 一五六九万二四〇八円

昭和四七年分の必要経費は、昭和四八年分及び昭和四九年分の経費率(収入金額に対する必要経費の割合)を算出し、その平均値を昭和四七年分の収入金額に乗ずることによって推計すべきである(昭和四七年の控訴人の業種、態様は昭和四八年、昭和四九年と同一であるから、推計の方法として、この手法の方が控訴人の用いる同業者の経費率を適用する方法よりも合理的である。)。ところで、昭和四八年分の経費率は九六・四五パーセント、昭和四九年分の経費率は九七・五〇パーセントで、その平均値は九六・九七パーセントであるから、これに昭和四七年分の収入金額一六一八万二七四五円を乗ずると、一五六九万二四〇八円となり、これが昭和四七年分の必要経費となる。

3  従って、控訴人の本件各係争年分の所得金額は次のとおりである。

(一) 昭和四七年分 四九万〇六九七円

(二) 昭和四八年分 一二二万二八三二円

(三) 昭和四九年分 一三九万一八四二円

(証拠)

1  控訴人

(一) 甲第一、第二号証の各一ないし一四、第三号証の一ないし四、第四号証の一ないし三、第五号証の一ないし五六、第六号証の一ないし一〇、第七号証の一ないし一三、第八号証の一、二、第九号証の一ないし一二、第一〇ないし第一六号証、第一七号証の一ないし一四、第一八号証の一ないし九、第一九号証の一ないし五、第二〇号証の一ないし一一、第二一号証の一ないし四六、第二二、第二三号証の一ないし一二、第二四、第二五号証の各一ないし三、第二六号証の一ないし八、第二七号証、第二八号証、第二九、第三〇号証の各一、二、第三一ないし第三八号証、第三九号証の一ないし三、第四〇号証の一ないし五、第四一号証の一、二、第四二ないし第五三号証

(二) 当審証人河重英男、同斎藤秀雄、当審における控訴本人

(三) 乙第二二号証の成立は認め、その余の後記乙号各証の成立は不知。

2  被控訴人

(一) 乙第二一、第二二号証の各一ないし三、第二三ないし第三三号証、第三四号証の一ないし三

(二) 当審証人前田全朗

(三) 甲第六号証の一ないし一〇、第九号証の一ないし一二、第二二号証の一ないし一二、第二六号証の一ないし八の成立は認め、その余の甲号各証の成立は不知。

理由

一  当裁判所も控訴人の請求は失当として棄却すべきものと判断するものであって、その理由は、次のとおり付加・訂正するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一〇枚目表六行目から裏七行目までを

「控訴人が昭和四七年中に東村静雄から一二二七万五〇〇〇円、三洋電気工業株式会社から三四〇万七七四五円計一六一八万二七四五円の、昭和四八年中に東村静雄から二四〇五万七〇〇〇円、三洋電気工業株式会社から一〇四五万二〇〇〇円計三四五〇万九〇〇〇円の、昭和四九年中に東村静雄から一八五三万五〇〇〇円、有限会社東村電設から三〇四四万七〇〇〇円、三洋電気工業株式会社から六八六万一〇〇〇円計五五八四万三〇〇〇円の各収入のあったことは当事者間に争いがない。

そして、当審証人前田全朗の証言とこれにより真正に成立したものと認められる乙第二八、第二九号証によると、控訴人は昭和四七年中にユニオン電機産業株式会社から一五万〇〇〇〇円の収入のあったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

また、当審証人前田全朗の証言とこれにより真正に成立したものと認められる乙第二六号証、第二七号証(一部)によると、遠藤は昭和四七年頃からヤマト電機の外注工事を請負うようになったが、その受注工事全部を三パーセント位の利益を得て控訴人へ外注したこと、遠藤は昭和四九年中に控訴人に対し外注費として九八八万六五九一円を支払い、ヤマト電機から材料代の立替分を除いて請負代金一〇二七万六一四三円の支払を受けたこと、昭和四八年中も遠藤と控訴人間において昭和四九年とほぼ同じような取引があったが、遠藤に帳簿が存在せず遠藤の手許に控訴人との取引内容を明らかにする資料がないこと、ヤマト電機は昭和四八年中(四月以降)に遠藤に工事を請負わせ、その代金として遠藤が立替えた材料代の他に六五九万二二五七円を支払ったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

そこで、右認定の事実に基づき控訴人が遠藤から昭和四八年中に受領した外注費を推計すると、次の算式により六三四万二四一〇円となる。

〈省略〉

=0.9621(小数点5位以下切上げ)

昭和48年中に遠藤がヤマト電機から受領した材料代を除く金額×0.9621

=6,592,257円×0.9621=6,342,410円(円未満切捨て)

従って、控訴人は昭和四七年中にユニオン電機産業株式会社から一五万〇〇〇〇円の、昭和四八年中に遠藤から六三二万二四一〇円の、昭和四九年中に遠藤から九八八万六五九一円の各収入があったことになり、控訴人の本件各係争年分の総収入は、昭和四七年分一六三三万二七四五円、昭和四八年分四〇八五万一四一〇円、昭和四九年分六五八二万九五九一円となる。」と、

裏一〇行目の「前記」を「被控訴人の把握した」とそれぞれ改める。

2  同一一枚目表五行目の「所得金額」から六行目までを削除する。

3  同一一枚目裏末行から同一六枚目表末行までを次のとおり改める。

「(二) しかしながら、処分時に推計により課税せざるを得ない場合であっても、訴訟において所得金額等を実額計算するに足りる資料が提出されたときには、原則として実額によって算定するのが相当であるところ、控訴人は当審において、当審における控訴人の主張2のとおり昭和四八年分及び昭和四九年分について総必要経費の実額を主張し、その証拠として領収書等(甲号各証)の資料を提出したことが明らかである。

控訴人は、昭和四八年分の総必要経費は三三二八万六一六八円、昭和四九年分のそれは五四四五万一一五八円である旨主張するが、成立に争いのない甲第六号証一ないし一〇、第九号証の一ないし一二、当審証人斎藤秀雄の証言及び当審における控訴人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第二号証の一ないし一四、当審における控訴本人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一号証の一ないし一四、第三号証の一ないし四、第四号証の一ないし三、第五号証の一ないし五六、第七号証の一ないし一三、第八号証の一、二、第一〇ないし第一五号証、当審証人斎藤秀雄の証言並びに当審における控訴本人の尋問の結果によると、控訴人は昭和四八年中に外注費三〇六六万八二三〇円、ガソリン代六八万六六五二円(一部債務発生時が昭和四七年中のものもあるが、この点はしばらくおく。)、電話料金四万七五九一円、車輛関係費一二九万九四三〇円(一部車輛代が含まれており、この部分は減価償却費として計上すべきものであるが、この点はしばらくおく。)、接待費六万四四八五円(当審証人前田全朗の証言とこれにより真正に成立したものと認められる乙第三四号証の二によると、昭和四八年一月三一日にとんがり山会館へ支払われた六万二九〇〇円は昭和四七年分の経費と認められる。)合計三二七六万六三八八円の経費を支出したことが認められ、また成立に争いのない甲第二二号証の一ないし一二、第二六号証の一ないし八、当審証人斎藤秀雄の証言及び当審における控訴本人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一八号証の一ないし九、当審証人河重英男の証言及び当審における控訴本人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第二〇号証の一ないし一一、当審における控訴本人の尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一七号証の一ないし一四、第一九号証の一ないし五、第二一号証の一ないし四六、第二三号証の一ないし五、同号証の七ないし一二、第二四、第二五号証の各一ないし三、第二七、第二八号証、第二九号証、第三〇号証の各一、二、第三一ないし第三八号証、第三九号証の一ないし三、第四〇号証の一ないし五、第四一号証の一、二、第四二ないし第五三号証、当審証人斎藤秀雄、同河重英男の各証言並びに当審における控訴本人の尋問の結果によると、控訴人は昭和四九年中に外注費五〇一五万四八四〇円、ガソリン代九七万二一八五円(一部債務発生時が昭和四八年中のものもあるが、この点はしばらくおく。)、電話料金五万一〇一九円、車輛関係費一七七万八四八〇円(一部車輛代金が含まれており、この部分は減価償却費として計上すべきものであるが、この点はしばらくおく。)、宿泊費八九万九四〇〇円、消耗品費、事務費、接待費計四四万九二五五円合計五四三〇万五一七九円の経費を支出したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

なお、控訴人は雇人費を必要経費として主張していないが、原審における控訴本人の尋問の結果によると、控訴人は昭和四八年、昭和四九年中従業員三人を雇い、給料として月額一人当り昭和四八年は約九万〇〇〇〇円(三人で年額三二四万〇〇〇〇円)、昭和四九年は約一〇万〇〇〇〇円(三人で年額三六〇万〇〇〇〇円)を支払ったことが認められ、控訴人の総必要経費は一応昭和四八年分は三六〇〇万六三八八円、昭和四九年分は五七九〇万五一七九円となる。

従って、控訴人の総所得金額は、昭和四八年分四八四万五〇二二円(40,851,410円-36,006,388円=4,845,022円)、昭和四九年分七八二万四四一二円(65,729,591円-57,905,179円=7,824,412円)となる。

(三) そして、控訴人が、昭和四七年分について必要経費の実額を主張立証しないので、同年分の必要経費については推計によらざるを得ないのであるが、原審における控訴本人の尋問の結果によると、控訴人の営業は昭和四七年から昭和四九年にかけて経営規模が大巾に拡大したものの、三年間を通じ、もっぱら元請業者から材料の支給を受けてビル、工事等の内部配線工業を下請けし、その受注工事を控訴人と三名の従業員で施行するほか、外注先へ再下請けさせるという同一の営業形態であったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠がないので、昭和四七年分の必要経費は、昭和四八年分及び昭和四九年分の経費率(総収入金額に対する総必要経費の割合)を算出し、その平均値を前記認定の昭和四七年分の総収入金額に乗ずることによって推計するのが合理的である。

ところで、昭和四八年分の経費率は〇・八八一四(小数点五位以下切上げ)、昭和四九年分の経費率は〇・八八一〇(小数点五位以下切上げ)で、その平均値は〇・八八一二であるから、昭和四七年分の総収入金額一六三三万二七四五円に右平均値〇・八八一二を乗ずると、二四三九万二四一四円(円未満切捨て)となり、これが昭和四七年分の総必要経費となる。そうすると、昭和四七年分の総所得金額は一九四万〇三三一円となる。」

二  よって、原判決は一部理由を異にするも結局相当であって、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仲西二郎 裁判官 長谷喜仁 裁判官 下村浩蔵)

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